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Worm Moon 4
オレサマ気質で横暴な神威が雅と交わした約束は、京介のみならず旧知の仲である柊吾や陵をも仰天させるものだった。
オレが間違っていると思ったら、教えてくれ。
雅から見た神威が間違っているんじゃないかと思えば、それを伝える約束。
雅が神威と交わした初めての約束だ。
雅の素朴な視点から結ばれた約束を神威自身は面白がっている様だが、鷹司伊織は神威のカリスマ性に陶酔している為、実は心中穏やかではない。
月居神威は、表の顔は大企業の社長だが、裏の顔は天狼組と云うヤクザの頭でもある。
最も天狼組の頭には代理の者を据えている為、天狼組と神威を結び付ける事は出来ない。神威は巧妙に戸籍を変え、一般人として生きる道を選んだからだ。
最近襲名したばかりの天狼組組長は、かつて若頭だった男だ。本来ならば息子が継ぐ筈だったが、不慮の事故で後継は亡くなったとされている為、血筋ではない若頭が選ばれたのだ。
勿論、襲名にあたっても神威や伊織の息がかかっており、伊織同様、神威に絶対の忠義を誓う男の一人である。
現在の天狼組のトップが傀儡だと云う事実を知る者は極僅か。一枚岩の天狼組でも更に極秘とされている。それに加え、種々の情報操作は勿論、警察や公安にも天狼組の手を伸ばしているのだ。
全ては京介の為に設立した組織を存続させる為。
全ては京介の願いを叶える為。
神威は自分の存在を消し、天狼組を存続させながら、正攻法で京介をサポートするべく綿密に画策し立ち回ってきた。その甲斐あって神威が立ち上げた表の会社も、天狼組も順調だ。
おまけに代々の悲願だった、京介と番との邂逅に立ち会えた。
万一、番が素性よろしくない輩なら排除の一択だった。例え京介に恨まれても殺されても構わないと思っていた筈が。
京介が雅を引き取ると決めた時、雅と初めて逢った時から関わってきた神威は、純粋無垢の雅を気に入ったようで、何かと世話を焼いている。
京介がたった一度だけ保育園の迎えを陵に代わって貰った時も、オレサマを蔑ろにすンのか?とすぐさま京介に絡んできた。
その後も事ある毎に口にしているから、陵に先を越された事が余程口惜しかったのだろう。しかしプライドの高さから、雅が依頼してくるまで自ら迎えを買ってでる事は決してしない。
何事にも動じなかった筈の神威を、唯一起動させられる京介と雅に、伊織は密かに脅威を覚えている。
その反面、雅の純粋な子供らしさに和んでいる事実も持ち合わせており、神威がそのまま変わらずいるのが良いのか、雅に感化され見た事のない神威の誕生を見守るべきなのか、複雑なのだ。
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