Worm Moon 6

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Worm Moon 6

「そうですね、一時的なものだと思います。ですが少しでも異変を感じたら時間に関係なく連絡してきて下さいね」 陵が診断すると、京介はホッと胸を撫で下ろした。 「その言葉だけで感謝する」 「伊織ィ?朝一番で雅の好物届けられッように準備しとけ」 「承知しました」 どうやら神威の周囲には、伊織が控えていたらしい。神威の秘書⋯⋯側近だから当然ではあるが。 「いつもすまないな」 「水臭いな、京介くん。もっと頼って欲しい位なんだよ」 「悪徳弁護士サンの出る幕じゃねェよ」 「神威(おまえ)はもう少し京介くんを見習えよっ」 「雅くんが起きてしまうので、通話終了にしましょうか。京介さんも無理はなさらずに」 「あぁ。問題なければ朝連絡する」 いつもの様に神威と柊吾がじゃれ合い、陵が収める。日常になりつつある光景に京介は安息を感じていた。自分ならば、怪我をしようが熱を出そうが耐えれば良い。しかし雅はそうはいかない。怪我や病気を放置する訳にはいかないのだ。 「⋯⋯っはぁっ⋯⋯」 終話後しばらくして、雅の寝息が変わった。夜間の体調変化に備えて準備をしていた京介が雅の様子を伺うと、また熱が上がってきたようだった。よく見ると筋肉が震えている。 「寒くはないか?」 返事を求めた訳ではなかったが、思わず口を付いていた。小さな身体が更に震え、痛々しい。京介の呼びかけに気付いたのか、雅が目を開けないまま声の方向に手を伸ばした。 「さむ⋯⋯ぃ⋯⋯きょ⋯⋯けぇ⋯⋯」 弱々しく小さな呟きを聞き取ると、京介は布団から出た腕を優しく包み込んだ後、そっと元へ戻す。それから徐に衣服を脱ぎ全裸になった。 カーテンの隙間から漏れ入った、淡い月光に照らし出される見事なまでに均整のとれた身体は、京介が丹田に力を込めるや否や、ゆらゆら揺れる蜃気楼を纏い、みるみる縮みながら人外のモノへと変化し始めた。 瞬く間に京介が立っていた空間に、威風堂々とした姿で四足で立つ黒狼が居た。 犬神京介は狼⋯⋯大口真神(おおぐちのまがみ)の血を引く最後の狼だ。遠い昔、悲運にも不老不死の呪いをかけられてしまった狼でもある。 目の前で殺されてしまった『はじまりの番』が死ぬ間際にかけた呪いは、転生し続ける自分を見付けて欲しいと願うあまり、京介を不老不死の存在に変えてしまった。 永い番探しの中で、何度も非業の死を遂げる番を見送り、ようやく出逢えたのが雅だった。 京介が長年探し求めた唯一無二の番。だが雅はまだその事実を知らない。番の意味も京介との絆も。 今から番だと伝え、囲いこみャ良いだろ? 痺れを切らすのはいつも神威の方だ。神威は京介の孤独を垣間見ているせいか、何かと京介を(けしか)ける。
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