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2.男ふたりの関係性
また長野まゆみ先生の話から始めてもいいでしょうか…。
私の中学・高校時代の読書体験は、ほぼ「長野まゆみの小説100パーセント」でした。当時はBL漫画雑誌の創刊ラッシュ期だったのでそれらも好んで読んでいましたが、やっぱり、何をおいてもいちばん好きだったのは長野先生の一般文芸作品です。
めくるめく幻想的な世界のなかに、さも当然という顔をして、なんの注意書きもなくいきなりぶっこまれる男どうしの色恋と肉体関係。んもぉー、大好物でした。
長野先生のお書きになる男どうしのカップルは、だいたいにして感情表現が希薄で、「好き」「愛してる」みたいな甘いセリフを言ってるイメージがない。きれいな顔に何の表情も浮かべず、あるいは皮肉っぽい笑みや無邪気な笑みを浮かべて、ただ執着しあったり、身体を重ねているだけというイメージがあります(「レモンタルト」「白昼堂々シリーズ」など、不器用で切ない片思いがテーマの作品もあるけど)。
初期作品なら「雨更紗」「雪花草紙」「行ってみたいな童話の国」あたり。比較的近年の作品ならば「左近の桜」「あめふらし」「よろず春夏冬中」「猫道楽」あたりに危うい男どうしの関係が描かれていますが、どれも甘々なラブからはほど遠い。非現実的なファンタジーの世界にクラクラしながら没入しました。
かように硬派&糖度低めの世界だからなのか、私は長野作品のキャラクターに対して、あんまり受けとか攻めとかのイメージを持っていません。当時は「リバ」の概念も知らなかったけど、その日の気分で入れたり入れられたりしてるんだろうなと感じるし、攻め受け固定していそうな二人でも「攻めが愛し、受けは愛される」みたいな関係がいまいちイメージできない。彼らの間にあるのは恋愛感情じゃなくて執着や支配、身体だけの関係で、もしかしたら機械人形のように、そもそも感情などないのかもしれない。
なので私は自分で創作をするときは、長野先生の研ぎ澄まされた硬質な世界を崇拝しつつ、もし彼らに「ラブ」があったら、もし彼らが身近にいるとするならば、どんなふうに心をかよわせ、愛しあうのか見てみたい、という気持ちでいる気がします。そして幸せに暮らしてほしい。前作エッセイにも同じことを書きましたが、これはもう二次創作の精神ですよね……。
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