形のない私たちは

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形のない私たちは

 病室の窓から見える銀杏(いちょう)の葉も、すっかり黄金色になりました。  あの葉が一枚また一枚と散っていく度に、私の記憶も一つまた一つと失われていくように感じます。  もうお名前も、お顔も、思い出せない人の方が多くなってしまいました。お世話になった皆さまには、これからも健やかであってほしいものです。  ここのところ思い出すのは、彼女のことばかり。  お名前は何だったかしら。やっぱり思い出せませんので、A子ちゃんとしましょうか。  彼女は、私の全てでした。  最後の銀杏の葉が落ちてしまう前に、A子ちゃんと私に起きたお話を、ここに残そうと思います。
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