第8話 飾りのタンポポ

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第8話 飾りのタンポポ

 風花は優季に貰ったタンポポの花を、父の部屋に持って行った。そこに麦わら帽子があるのだ。家の中で唯一、ママが残して行ったもの。 「お父さん」 「ん-?」 「タンポポ、ママの帽子に置いていい?」 「帽子? ああ、その麦わら帽子かい?」 「そう。ママってタンポポ大好きだったでしょ? お帽子にもくっついてるもん」 「ああ、それな。本物じゃないけどな」 「知ってる…アクセって言うんでしょ?」 「うーん、ちょっと違う気もするけどな。帽子の飾りだよ」  風花はタンポポの花を大切に持ったまま、母の麦わら帽子にくっついている『飾りのタンポポ』を見つめた。 「風花、タンポポのお花をそのまま置いちゃうと、すぐに(しお)れるからね、コップにお水を入れて来るから、そこにお花を入れたらいいよ。ちょっと待ってな」 「うん」  やっぱり見たことある…。ううん、風花も持ってた、この『飾りのタンポポ』。どこに行ったのだろう。そもそもどこにあったのだろう。短い過去を懸命に探ろうとするが、風花は何も思い出せなかった。
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