11人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
第8話 飾りのタンポポ
風花は優季に貰ったタンポポの花を、父の部屋に持って行った。そこに麦わら帽子があるのだ。家の中で唯一、ママが残して行ったもの。
「お父さん」
「ん-?」
「タンポポ、ママの帽子に置いていい?」
「帽子? ああ、その麦わら帽子かい?」
「そう。ママってタンポポ大好きだったでしょ? お帽子にもくっついてるもん」
「ああ、それな。本物じゃないけどな」
「知ってる…アクセって言うんでしょ?」
「うーん、ちょっと違う気もするけどな。帽子の飾りだよ」
風花はタンポポの花を大切に持ったまま、母の麦わら帽子にくっついている『飾りのタンポポ』を見つめた。
「風花、タンポポのお花をそのまま置いちゃうと、すぐに萎れるからね、コップにお水を入れて来るから、そこにお花を入れたらいいよ。ちょっと待ってな」
「うん」
やっぱり見たことある…。ううん、風花も持ってた、この『飾りのタンポポ』。どこに行ったのだろう。そもそもどこにあったのだろう。短い過去を懸命に探ろうとするが、風花は何も思い出せなかった。
最初のコメントを投稿しよう!