幼なじみのあいつは策士だと思う

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 今は、放課後。俺は、日誌とにらめっこしている。 そんな俺を邪魔するやつがいる。 それがこいつだ。 「あのさ、私ペット飼いたいんだよね」  前の席の椅子に座って話かけてくるのは、幼稚園からの腐れ縁の真衣だ。 「飼ったらいいじゃん」 「猫か犬どっちがいいと思う?」 「じゃあ、猫」 「え~。でも帰ってきたらしっぽ振って喜んでほしい」 「じゃあ、猫じゃないじゃん」 「でも、毎日散歩に行くのは無理な気がするんだよね」 「じゃあ、猫でいいじゃん」 「でも公園で、フリスビー投げたりするのも楽しそうだよね」 「じゃあ、猫じゃないじゃんって。もしかして、このやりとり楽しんでる?」 「ばれた?だって暇なんだもん」  にこりと笑う真衣に、俺はため息をついた。 「あのさ、お前も日直だろ。文章を考えるの手伝えよ」 「私が、そういうの苦手なの知ってるでしょ。さあ、彰くん。頑張って」  そういうと、真衣は、俺の肩をたたいた。 「じゃあ、邪魔するなよ」 「はい、はい。静かにしますよ」  少しふてくされたような真衣に呆れながらも俺はやっと日誌を終わらせた。 「よし、終わった」 「やった!じゃあ、喋っていい?まあ、座ってよ」 立ち上がった俺に真衣が声をかけた。 「なんだよ。早く出してこようぜ」 「いいから、いいから」  そういうと、立ち上がった俺を、真衣は無理やり座らせた。 「なんだよ」 「あのさ、私。引っ越すんだよね」 「はっ!?どこに?」 「どこだと思う?」 「わかんねえよ」 「じゃあ、ヒントね」 「そこは、私が住んでみたかった所です」 「もしかして、東京か?お前、前に言ってたよな」 「そこは、今の住んでる所と比べてもそんなにごみごみとした場所では、ありません」 「じゃあ、東京じゃないか」 「そこは、私が大好きな場所まで徒歩ですぐに行けます」 「やっぱり東京だろう。お前が好きな雑貨、表参道にお店があるって言ってたよな」 「これから学校の帰り道は、家までずっと彰と一緒です」 「え?それって」 「そう!彰と同じマンションに引っ越すの。ママ達仲良しだから大喜びだよ」 「え?だってずっと住みたい場所って言ってたよな」 「小さい時、彰といっぱい遊びたくて同じ所に住むって言ってたでしょ。あれから、ずっと同じ気持ちだよ」 「大好きな場所って」 「だって、彰のママが作るお菓子美味しいし」 「なんだよ、お前。俺はてっきり転校するのかと思ったじゃん」 「ビックリした?」 「ビックリした」  俺はほっとして椅子の背もたれに寄りかかって息をついた。そんな俺をみて真衣は、笑みを浮かべながらいった。 「引っ越しが決まってすごい嬉しかったんだ。これで、好きな時に彰の家にいけるでしょ」 「今だってよく遊びに来てるくせに」 「まあ、そうだけど。でも、これからは徒歩すぐだよ」 「確かにそうだな」  すると、イタズラっぽく真衣が聞いてきた。 「ねえ、私がこんなに嬉しいのは何でだと思う?」 (また、こいつまた俺をからかうつもりなんだな。しょうがない。のってやるか) 「それは、真衣が俺に恋してるからだろ。そんなに俺のそばがいいのか。しょうがないな」 (どうだ!) 「彰くん」 (なんだ?) 真衣は、顔を近づけてきて俺を見た。 「大正解!おめでとう!」 「え!?正解?」 「じゃあ、日誌出しといてね。バイバイ」  真衣は、放心状態の俺に手を振りながら教室を出て行った。 「えー!!」  俺の声だけが、誰もいない教室にこだました。
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