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まどろみの中で律が笑う。
頬を撫で、耳に口付け、胸から腹まで、壊れものに触れるようにたどられた。らしくもなく慎重な手つきがおかしくて、からかってやろうと思ったのに、口から出るのは意味をもたない音だけだった。
「うー、う、あぁ……!」
「しぃー。ほら、気持ちいいだろ? いつも触ってるから、だんだん湊斗の体も気持ちいいこと、覚えてきたな」
胸なんて触られたこともないはずなのに、指でこねまわされるとそれだけで身もだえするほど気持ちがいい。胸を逸らして律の指に押しつけると、もっと気持ちがよくなった。
体を揺らす湊斗を見て、律がくすくすと笑っう。ろくな反応もできない湊斗の体を、愛でるように律は撫で続けた。まるで人形遊びだ。
「ああ、やっぱり、薬が少ないと反応がいいな。半分起きてるのかな。目は閉じてるけど」
尊厳なんて何もない。湊斗の意思を丸ごと無視して、律は湊斗を弄ぶ。許してはならないその行為は、しかし湊斗に倒錯的な幸福を与えるだけだった。
りつ。
――りつは俺のおうさまだ。誰よりつよくて、完璧で、弱いところなんてなにもない。りつだけは俺を裏切らない。なんでも言える。ずっと味方でいてくれる。
だから湊斗は律のためならなんでもするし、律だけは、湊斗に何をしてもいい。
「あー、う」
「んー? はは、何言ってるんだか、分からないよ。かわいいな、湊斗」
慣れた様子で前立腺を捏ねられて、あっけなく湊斗は吐精した。出ているはずなのに何も出ない。それなのに腹の上は、もう何度も同じことを繰り返したかのようにどろどろになっていた。
力の入らない湊斗の足を勝手に持ち上げ、律は腿の裏をきつく吸い上げる。だらりと垂れ下がったつま先がぴくりと動いて、次の瞬間、ぴんと伸びた。
「ひ、あ――!」
「どろどろだ。きもちいい」
痺れるような快楽が、湊斗の全身を支配していた。律が押し込むように腰を動かすたび、下半身から溶けてなくなりそうな絶頂感を覚える。
出すものも残っていないのに、律が突くのに合わせて、性器からこぽりと熱いものが零れるのを感じた。
「――っ、ふ……うああぅっ」
唇がわななく。よだれがこぼれていることすら、拭われるまで分からなかった。腹がいっぱいに満たされていて、苦しいほどなのに、その痛みさえ快楽に変わる。
律の動きがしだいに速まり、肌を打ちつけ合う音の間隔が短くなっていく。耳まで犯されている気分になる、ただれた音だ。やがて律がぴたりと動きを止めると、腹を中からぐっと押し広げられる感触がして、熱いものが中に広がった。
「お前が俺の――だったら、よかったのにな。湊斗」
はちみつを落としたような、甘ったるい声で名を呼ばれた。その瞬間、薄膜を隔てて感じていた感覚に、ふっと現実感が戻ってくる。脳をがつんと殴られたような強烈な快感が一気に鮮明になって、律は声にならない叫び声をあげた。
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