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犬は容赦なく走るものだと思っていた。
だが、大人しいその犬はずっと彼の隣に寄り添っていて、私の歩幅に合わせてくれている彼に合わせてちゃんと一定のペースでゆっくり歩いている。
「あ!先輩!あの公園で休憩しましょ?な?サワもちょっと喉乾いたよな?」
そんなことを言われたら嫌とは言えない私はそのまま並んで緑地公園に足を踏み入れた。
十七時前なのに薄暗い公園には既に電気が灯っていて少し寒い気もする。
しかし、子供たちも帰って静かな公園の雰囲気は嫌いじゃない。
とりあえずベンチに座って水飲み場で水を飲ませているその後ろ姿を見つめる。
黒い大きな塊が二つにしか見えなくてやはり少し笑ってしまった。すると、
「あれ?楽しそうですね!どれにします?」
いつの間にか目の前に彼と犬が居てまた缶が差し出されている。
彼の手にあったのはココアとミルクティーとカフェオレと抹茶オレ。
どうしていつもこんなにいっぱい買うのか?
「いや、またもらうなんて申し訳ないんだけど」
「今日付き合ってもらったお礼と僕が寒かっただけなんで!」
「……ありがとう」
そう言われたら断るのも悪い気がしてミルクティーをもらう。
ほんのり温かいその缶を頬に当てると思わず微笑んでしまった。
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