忠犬

2/3
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
佐和(さわ)ー!おはよ!」  席で手を振る美里(みさと)の隣に荷物を降ろして座る。 「おはよ。はぁ……」  ため息を吐きながら腕を伸ばして机に伏せると、美里はくすくすと笑った。 「いいじゃん!もう付き合ってあげたら?」 「何で」  机に顔をつけたまま美里の方を向く。   「あんな毎朝熱烈アタック続けてくれる後輩、かわいく思えて来ない?」  美里はこっちにイスを寄せてきて廊下に向かって指をさした。 「ない」  そっちを向くと、また彼が手を振っている。 「えー、あのハチくん、それなりに顔もいいと思うけどなぁ」 「じゃあ、美里が付き合ってあげたら?」 「私じゃなくて彼は佐和をご所望でしょ?」  無視をする私の代わりに美里は彼にヒラヒラと手を振ってからまたこっちを見て首を少し傾げた。  楽しそうに上がった口元を見て私は口を曲げる。 「いいから自分の教室に帰りなさい!」  体を起こして言い切ると、彼はなぜか嬉しそうに笑った。 「はいっ!じゃあ、またお昼に来ますね〜!」 「来なくていい!」  毎日毎日……いい加減にして欲しい。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!