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「犬飼!ハチがお呼びだぞ!」
昼休み、絶対からかわれているとしか思えなくて、その声の主にも睨みを効かせる。
彼がいつも追いかけてくるからだけじゃない。
私の“犬飼”という苗字と彼の“八尾”のせいで余計に私たちは“飼い主”と“忠犬”と認定されてしまっていた。
「ワンっ!!」
更に彼まで変にノるからタチが悪い。
「キミねぇ!」
窓際まで歩いて少し上にあるその顔を見る。すると、
「先輩も僕のこと“ハチ”でいいですよ!」
彼はにこにこと嬉しそうに笑った。
「……キミ、人の迷惑わかってる?」
「えっ!?迷惑ですか!?」
驚いたようなその反応に逆にこっちが驚く。
毎日どこでも追いかけられて……なぜ迷惑だと思わなかったのか?
「そうだったんですね。……すいません」
急にしょぼんとしたその姿。
そんなもの見えないはずなのに、耳と尻尾がペタンと垂れてしまった気がする。
私は何も悪いことはしていないのに。
どうしてこんなにも罪悪感が募るのか。
そして、どうしてみんなそんな憐れんだ目を向けてくるのか。
「……あーもぅっ!!ちょっと来てっ!!」
居た堪れなくて廊下に出るとその大きな手を掴む。
そして、私は彼を引いたまま廊下を進んだ。
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