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限界
わざわざ校舎から離れた武道場の側の自販機まで来て人が居ないことを確認して息を吐き出す。
「で?」
「は?」
キョトンとされてとりあえず繋いだままだった手を離すと、彼はにこにこと笑った。
「何飲みます?」
「いや……」
「冷えますからね」
言いながらガコンガコンと音がする。
「どれがいいですか?」
手にあるのはコーヒー、カフェオレ、ミルクティー、ココア、コーンスープの缶。
「いや、買い過ぎでしょ?」
「はい。だから、一つもらってくれますか?」
これはどんな技なのだろうか?
ココアを手にすると、彼は嬉しそうに笑って残りは自分のブレザーやスラックスのポケットに突っ込んだ。
そして、思い出したかのように右ポケットに手を突っ込み出てきたコーンスープを見て笑う。
「……ありがとう」
とりあえずお礼を言うと、
「はいっ!!」
彼はキラキラとした笑顔を向けてきた。
どう見たって大きな尻尾がブンブン振られているようにしか見えない。そして、
「あったまりますねぇ」
缶を頬に当ててふわりと笑う彼を見て、私もココアを両手で包んだ。
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