限界

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「あっれぇ?先輩?」  目の前でヒラヒラと手を振られてその手を払い除ける。 「いや、だって反応ないから」  払われた手を擦りながら口を尖らせるのは一体何なのか?  あんな訳のわからない言葉だけで反応しろという方がおかしいと思うのは私だけなのか?と少しだけ不安になる。 「はぁ?意味わかんないでしょうが」  ため息を吐くと、彼はぴょこんと耳と尻尾を立たせたように反応してこっちに近づいてきた。 「先輩はね!恩人なんですよ?」  この子は……圧倒的に言葉が足りない。  今までどうやってきたのか問い正したくなるレベルだ。  もう面倒臭くなってきて、このまま去ろうか?なんて思ってしまう。なのに、 「あれ?もしかして覚えてくれてます?」 「何が?」  近い距離で顔を覗き込まれて一歩下がった。 「いや、何で?って理由聞かないから」  なぜ私がいちいち聞かなくてもわかる話し方をしないのか。 「ははっ!面倒臭そうな顔〜!」  イラッとしてきて頬を抓ると、 「ふぉめんなはい」  わかりやすいくらいにシュンとする。  大きなワンコにしか見えなくてため息を吐きつつも笑ってしまった。  だが、話を聞こうにも昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴ってしまう。 「キミは今日暇?」 「はいっ!!」  やはりブンブンと大きな尻尾を振っているようにしか見えなかった。
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