限界

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 だから、終わっても教室から出たくなかったのに、 「ハチのとこ行ってやんなくていいのか?」  クラスに居ても言われ続けて席を立った。  カバンを引っ掛けたまま彼の前も素通りする。  速歩きで廊下を進むと、ちゃんとついてきた彼と結局下駄箱で一緒になった。 「どこ行きます?」  なぜ、素通りしたのに普通に話しかけてくるのか?  なぜ、私はこんなにも息が切れているのに平然と笑っているのか?  何か納得できなくて返事ができない。  無視して靴を履いて歩き出すと、それでもまたニコニコしてついてくる彼。 「今日も見事な忠犬振りだなっ!」 「だろ?」  話しかけられて笑顔で答えるのもやめて欲しい。  歩幅の違いなのか、こっちは撒く勢いで息を切らせているのに、彼はやはり余裕でついてきている。 「もー!何なのよっ!!」  耐え兼ねて振り返ると彼はまたニコッと笑った。 「僕ん家、あの川向うなんで付き合ってくれません?」  八重歯を見せて、屈託のない顔で。
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