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理由
連れて来られた川向うの住宅街。
私は初めて足を踏み入れた場所で正直落ち着かない。
だが、慣れたように歩く彼は大きな彼でも更に大きく見える立派な門の前でやっと足を止めた。
「ここが僕ん家です!」
確かにその表札には“YAO”と書かれている。
「どうぞ!」
「え!?行くの!?」
門を開けて促されて、ブンブンと手と首を横に振った。
よく知らない男の後輩の家になんて冗談じゃない。
「だって来てもらわないとサワに会えないじゃないですか!!」
「は?」
なのに聞こえた私の名前?
「あぁ!うちの犬ですよ?」
すぐにその混乱を理解したらしい彼は教えてくれたが、何となく複雑ではある。
犬と同じ名前ってこと!?
「あ、じゃあ!連れて来るんでちょっと待ってて下さいね!」
動かないと悟ったらしい彼はニコニコ笑うとさっさと家の中に入って行った。
取り残された私はどうにもできずただ中途半端に開いた門の前で佇む。
正直、帰りたい。
よく知らない後輩の家の前で私は一体何をしているんだろう?
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