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「ようやく桜ちゃんと恋人同士になれたのに……。ようやく『家族』になれたのに……。お前のせいで台無しじゃないか。……そうだ。お前さえいなければ、俺たちは幸せになれるんだ。お前さえ、いなければ……」
今度は左手でさっき掴み損ねた棒切れを素早く拾うと、ショウジはボクに一歩近付いた。
「どうせ犬一匹いなくなったって、誰も本気で捜しやしないさ」
ショウジが近付く。
「お前も一緒に埋めてやるよ。大好きな、桜ちゃんの隣にな」
ぐるるるるるるるる。
許せない。こいつがサクラを……。
絶対、許さない!
ショウジが、頭上高く棒切れを振り上げた。
ボクは、後ろ足に力を込めた。
「ひっ!」
え?
ショウジが急にのけ反ったかと思うと、そのままガクガク震え出した。
ボクは後ろ足の力を抜くと、ショウジの顔をじっと見つめた。
ショウジは両目を見開き、ただ一点を見つめている。その顔には血の気がなく、口をだらしなく半分開き、唇を小刻みに震わせている。
「さ、桜……」
何を言っているんだ?
「君が悪いんだよ。俺がこんなに想っているのに……。君が……」
ショウジの手から、棒が落ちた。
「ひぃぃぃぃっ!」
声にならない声を上げ、ショウジが突然尻もちをついた。
ショウジの口から泡がゴボゴボと溢れ出し、ぐるんと白目を剥いたかと思うと、その場にばたんとひっくり返った。
ショウジは暫く身体をピクピクさせていたが、だんだん静かになっていき、ついには動かなくなってしまった。
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