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醜女の女房
お転婆な娘の着物を繕うべくセツが裁縫仕事をしていると、ガラリと戸が鳴った。
遠方から戻った主人、吉次郎を出迎えようと急ぎ玄関へと向かい、三つ指を立てて頭を下げた。
「お帰りなさいませ」
「父上はいるか?」
「はい、庭先で小春と…」
「そうか」
淡々とした言葉を交わし、挨拶も適当に主人は隠居した義父の元へと行ってしまった。
祝言を挙げてから、かれこれ二十年―――、死んだ姉の代わりとして藍原藩主の懐刀として名を馳せる柊木家に嫁入りしたセツは無情な日々を送っていた。
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