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スクーカムの意図はいまだに分からなかったが、静かに語る彼が真剣な面持ちだったので、ソマリは黙ってその言葉を聞いた。
「それが猫をかわいいと知った今では一変した。猫に会うのが楽しみなあまり、その時間を捻出するために体の鍛錬や軍の仕事を集中して短時間でこなすようになった。結果、今まで以上の成果を得られている。君や猫と会うと心が癒され、日々の食事も不思議とおいしいと思えるようになった。特に猫を見ながら君と一緒に味わう茶と菓子は、至高の味だ。……よくある茶菓子なのに、なぜこうも味が変わるのだろう」
スクーカムは穏やかに微笑み始めた。その優しい微笑を見て、自然とソマリの頬も緩む。
「父上も猫をかわいがるようになって、俺以上に穏やかになった。……君には言いづらいが、実はフレーメンの侵略を俺たちは企てていた。フレーメンの豊富な水資源、肥沃な大地、歴史ある織物の技術……それらをわがものにしたくてな」
「そうだったのですか……!」
驚愕したように言うソマリだったが、実は別に驚いていない。
(十一回の人生の私の死因は、すべてサイベリアン王国がフレーメン王国に仕掛けた戦争が理由だったもの)
だから今回の人生も、その戦の発生は免れないだろう考えていた。
そして自分の死が、戦いの渦中に訪れることも。
(まあ、それまでの二十一回の人生と今回はまったく違うからひょっとしたら死を免れられるかもって、淡い期待を抱いてしまっていたけれど)
しかし二十一回とも同じタイミングだったから、きっと今回もそうなのだろうなと諦め半分だった。
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