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猫ちゃん以外どうでもいいんです!
「ソマリ・シャルトリュー公爵令嬢! 今この瞬間を持って、君との婚約を破棄させていただく!」
頭上には大きなシャンデリアが煌めき、床には赤絨毯が敷き詰められたフレーメン王国の大広間。
舞踏会の会場となったその場所に、衝撃的な言葉が響き渡った。
それまで優雅にダンスを踊ったり、楽しく歓談していたりした招待客たちがざわつき始める。
たった今王太子アンドリューに婚約破棄を言い渡されたソマリ・シャルトリューに向けられたのは、憐みの視線だった。
しかし、当のソマリはというと。
(この台詞を聞くのももう二十二回目ね)
まったく動じず、ただ婚約破棄の口上を述べるアンドリューを見据えていた。
繰り返される人生の最初は、いつもこの場面からだった。
なぜそんなことになっているかはわからないが、二十歳の時に必ず死亡するソマリは、その度に十五才の婚約破棄される場面に戻される。
「我が城の宝物庫から度々物がなくなっていたのだが……。君が城を訪れた際に、人目を気にしながら宝物庫を出入りしていたという証言がいくつも寄せられている! 由緒正しいフレーメン王国の王妃に、盗人は相応しくない!」
得意げな顔でアンドリューは婚約破棄の理由を述べた。ざわめきが一層大きくなった。
「え、何? 泥棒なの?」とか「さもしいわねえ」などという、侮蔑の声すらソマリの耳に届いてきた。
(今考えても、お粗末な理由ね……。まあ、いくら探っても私に婚約破棄できるような行動がなかったものだから、泥棒にでっちあげることくらいしかできなかったのだろうけれど)
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