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久我優雅という名前は、裏ではとても有名だ。
私は顔を知らなかったけど、名前だけは聞いていた。
高校生という異例な若さで若頭を務めており、圧倒的な強さを誇っているらしい。
喧嘩を売るのは命懸けだという噂も聞いている。
この男がそうなのね……
「ありゃ、知ってるんだ?」
「まぁ。私は情報屋ですから。よく耳に入ってくる名前です」
明らかに年上だろうから、潤って人には敬語を使った。
久我優雅は高校生ということだけど、私よりは上だろうし敬語を使った方がいいでしょうね。
「へー、情報屋なんだ!」
「はい」
情報屋は意外と稼げるから、家賃にしても借金にしてもちょうどよかった。
もう家賃に関しては払う必要もなくなったけど……
「情報屋、か。ねぇ、君の名前はなんていうの?」
感傷に浸っていた時、名前を聞かれた。
「折川珠那です」
丁寧語をつけて答えた。
今更だけど、これからは敬語で言うようにするつもりだから。
「珠那ちゃんってもしかして、折那?」
折那は私の情報屋の時の活動名。
折川の“折”と珠那の“那”から取って、折那にした。
この男は名前を聞いただけで分かったらしい。
いや、名前を聞けば分かる人は分かるか。
「そうです。情報屋の時は折那として活動しています」
嘘を言う必要もないので、肯定した。
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