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「違うよ。彼女じゃないから」
「そうなの?」
今度は私を見ながら聞かれた。
「はい、彼女じゃないですよ」
「そっか、違うんだ。名前はなんていうの?」
「折川珠那です」
「みなちゃんね。私は優雅の母の久我未珠。よろしくね」
ふわりと微笑む久我さん。
その微笑みは私と違って優しさに満ち溢れていた。
「ねぇ、みなちゃんってどういう字なの?」
「珠は王に朱色の朱で、那は那覇の那です」
これで通じるだろうかと思いながらも伝えてみた。
「へぇ、そうなんだ。私の名前にもね、珠が使われてるんだよ。まるで運命みたいだね」
「それは聞き捨てならないよ。未珠と運命なのは俺だよね?」
「もうっ、輝悠。張り合わないでっ」
久我さん……優雅さんのお父さんの方に軽く睨まれた。
どうやら嫉妬されているよう。
独占欲が強いんだなってそう思った。
「父さん……」
優雅さんは呆れを含んだ声を出した。
「珠那ちゃん?だっけ」
「あ、はい。そうです」
「気になってたんだけど、珠那ちゃんってもしかして折那?」
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