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「ったく。……羽月、夢叶えるまで連絡してくんなよ?」
「吹雪こそ。あ、でも連絡先は消すなよ! 傷つくからな!」
「しつこいなぁ! それもう何回も聞いたから。分かってるから」
お互いの夢を叶えるまで連絡を絶つ。
お互いが進路を決めた日に、約束した。
約束と言うか、願掛けだ。
また羽月と映画を作りたい。
本当は、連絡を絶ちたくはない。この先も一緒に映画を作り続けていく道もあった。
だけどお互いが行きたい大学は違ったから。
その時に、夢を叶えるまで連絡を取らない、という願掛けを持ち出したのは、羽月のほうだった。
「諦めてるとか、やだからな」
「羽月こそな」
2人の間を沈黙が流れる。
周りでは別れを惜しむ鳴き声や、楽しそうに笑っている声が溢れている。
まるでそれが遠い場所のことのように感じるくらいには、俺たちの間は静かだった。
「……じゃ、な。吹雪」
「あぁ。またな、羽月」
ずっと握手していた手が、自然と離れる。
少しだけの別れだ。
また会おうな、吹雪。
俺は羽月の横を通り過ぎ、振り返ることなく学校を後にした。
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