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「この踏切だよな?」
景色が黄金色に輝く夕焼けの時間帯に僕たち三人はその場所を目指した。
「えぇ……。
おそらくは、この先にあると思う」
彼女の話によれば、そのお店は黄昏時にオープンするらしい。
「では行こうか……」
田舎町の寂れた商店街を抜けた所は、夕日で紅く染まりながらも薄暗い。
そんな雑木林とその先に見えている海岸線がとても不気味に感じられた。
「いえ、5分程待ちましょう。
そろそろ電車が来るから……」
彼女は腕時計を確認する。
しばらくして踏切音があたりに響き渡ると、目の前に遮断機の棒が下りてくる。
いつも聞いている筈の音と、視線の位置に現れる黄と黒の虎柄バーが緊張を高める。
一時間に一本間隔でしか来ない二両編成の電車が僕たちの目の前を通過していくも、田舎のローカル線という事もあってか、殆ど客は乗車していない。
電車を目で追っていたら、彼女が口を開く。
「そのお店、ネットの航空写真でも確認できないのよ。
この先に広がっているのは雑木林と海だけだから……」
ならば実在していないのではないかと思ったけど、二人が乗り気なので、そんな事は言えない。
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