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俺はその宝石を手に取った。
次の瞬間、怪異の意味を理解する。
博愛、そしてフィランソロピーの文字だ。
先ほど、襲われた雪玉モドキは宝石を落とした。
それと似た石を持つ狐娘が、俺を空腹から満腹に変えた。
つまり、俺の望み通りに『世界を書き換えた』のだ。
神様を前に動揺し、俺は絶句した。
代わりに、裕希が質問する。
狐娘は、おにぎりを食べながら、平然と答えた。
「私とそこの彼は、貴女の世界へ迷い込んでしまったのです。私たちは元の世界に戻れますか?」
「うむ、戻れるぞ。わらわ、マリィさんの創った世界じゃからな。ただし、元の世界に戻るにも仕掛けがある」
「そうですか。ところで貴女は土地神様なのですか」
「半分だけ正解かの。隠居の元神様じゃ」
「そうなのですね。ところで……京くん、私たち何か忘れていない?」
裕希は急に看護師モードになった。
神様のような人知を超えた存在にも物怖じしなくなった。
俺も引きずられて、大人の男として冷静になった。
「神様さ。今すぐ世界を書き換えて、俺たちを人間界へ戻してくれないか」
「拒否する!」
「え~!」
「そんな顔をするでない。ただでは面白くないじゃろうということじゃ」
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