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現実世界へ帰ろう
阿仁川の河川公園。アスファルトの道は長い。
通常は階段でする、じゃんけん遊びは長期戦になっていた。
10年ぶり、向こうに設定したゴール地点に、誰が先に着くかで勝負だ。
俺は身長のおかげで、脚が長く一歩を大きく出られた。
裕希とマリィを離して独走状態だ。
調子に乗って、マリィたちへ勝利条件を追加要求した。
「なぁ、俺が勝ったら、王様ゲームよろしく、負けた人に命令していいか?」
「いいぞい。勝てるという慢心は良くないがのう」
「京くんに……命令していいの?」
追加ルールをしたことを俺は後悔した。
グーでは勝てる。
グーを捨ててパーチョキで攻めてきた裕希に、俺は動揺し続けた。
グリコは3歩分、パイナップルとチョコレートは歩数が多い。
しまいには、じゃんけんが弱いマリィにまで俺は負け始めている。
裕希が向こうに行ってしまった。
マリィが俺の横に並ぶ。
「お主は小器用じゃが、結果が出そうになると慢心が多いのう。勝負がつまらなくなると、白けてしまう性格は見直した方が良いかもしれぬ」
「ぐふッ。ぐっさりと心に突き刺さる言葉だぜ」
「ユウキのこと、気になっておるじゃろう。わらわ以外、この世界には何者もおらぬ。愛を叫んでみてはどうかの?」
「にゃにゃにゃにゃ!」
マリィはこんなところで、心理戦を仕掛けてくる。
俺はさらに動揺していた。
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