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裕希は打開策を考え続けて、リュックサックから虫よけスプレーを出した。
雪玉モドキに、そんなもので効くのかよ。
「殺すんじゃないよ。虫は追っ払うんだよ。森へ帰りな!」
俺に向けて、裕希は虫よけスプレーを噴射した。
白い霧同士がぶつかり合い、消えていく。
ただの虫よけスプレーじゃないな。
白い雪玉モドキの煙は全て消えた。
仕事の出来る女性の顔を裕希はしていた。
俺は一度だけ、お礼をした。
「京くん、大丈夫?」
「匂いが消えたらなんもだ。助かった、ありがとうよ」
「え、何、ありがと……うれしい。もう一回言って」
「やだ。もう言わない」
「裕希ありがとうと、ワンスモアプリーズ!」
「聞こえていたなら、何回も頼むな!」
また子供返りだ。
裕希がじゃれ付く。
お互いに揉みくちゃになって、地面を転がる。
その時、視線の先に光る石が見えた。
俺は手を伸ばして、その石を掴んだ。
「白い宝石か。えーと、文字つき」
「え、見せて、見せて」
「勤勉」
「ディリジェンス」
おそらく、この石は例の小さい雪玉の怪異を倒したら、手に入ったのだ。
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