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私は口から言葉を吐くたび、己を忘れていく。
まばたきをするたび、視界が曇って、濁って、どんどん自分自身のことが分からなくなっていく。
だれか。だれか、助けて。息ができないの。だれか……。
いつしか、叫ぶことすらできなくなっていた。
そんな真っ暗闇の中で彷徨う私の手を取ってくれたのは――。
「久しぶり! 楓ちゃん!」
「……七南?」
あの頃からなにひとつ変わらない笑顔を浮かべる、あなただった。
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