琉唯くんの姿

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「ありがと。あんたに感謝する時がくるとは思わなかったわ」 私は皮肉を込めてそう言ったが、心は軽くなっていた。 「なっ! ──お前なぁ……」 何か言いたそうに突っかかってきた琉唯くんは、私の顔を見て何故かそれ以上言うのを止めた。 私……何故か微笑んでいる自分に気付いていたが、今はそれを否定しなかった。 「お前、荷物それだけか?」 滅茶苦茶デカいスーツケースを見て、不思議そうに琉唯くんが尋ねる。 「うん、一応生活できればいいから。あとは給料出たら買い揃えていく」 そう説明すると、そのデカいスーツケースを琉唯くんは軽々を持ち上げる。私は申し訳なくて慌てて「大丈夫だから」と持ってもらうことを断ろうとした。 そこまでしてもらう義理はない。 「あのなぁ、お前は俺に恥かかせんのかよ。だからモテねーで間男捕まえんだろーが」 「はぁ!? 男運やモテ具合についてあんたに言われる筋合いは無いんだけど!」 何でこいつは何でも嫌味なんだ!! そりゃあ私は恋愛経験なんてないわっ! だからって元凶にそれを指摘されたくない。 私は反論しながら、それでも有難くその好意は受け取ることにした。 その時だった──。 玄関が開く音がする。そして「唯奈―っ!! お前帰ってきたのか!?」という怒鳴り声と私たちと目が合うのはほぼ同時。 何故かこの時間に基樹が戻ってきたのだ。 これぞまさに鉢合わせ。 「はぁ!? どー言う事だ! こいつ誰だよっ!!」 目が合って最初の言葉がそれだった。そして靴も脱がずにズカズカと部屋に土足で入り込み、私たちの傍まで駆け寄る。 私はビックリして、咄嗟に琉唯くんを庇って前に出た。
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