王道学園

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◇◇◇◇◇◇ 理事長からの連絡がきただけでまだ午前中だってのに疲労感がすごい。 まだあの人と直接会談するよりはましだが… 今日は理事長から頼まれた通り転校生に接触するため管理委員室に閉じこもらず自分のクラスに行こう。自室を出てからも視線は多かったが、星持ち上位者の寮からでるとさらに生徒からの視線が多くなっているのが分かる。視線が可視化されたら今頃俺は押しつぶされているだろう。 この視線から逃れるために少しだけ足を速めながら教室をめざす。 こちらを見て小声で話し合っている生徒を横目に見ながら歩いていると後ろから小走りで近づいている足音が聞こえた。 「珍しいな、この時間に雪白が登校してるなんていつもは授業出ても途中からだっただろ。」 挨拶をしながらクラスメイトの伏見弦が弓道部の朝練帰りなのか大きなバックを持ち近づいてきた。一度も染めたことのないような綺麗な黒髪の短髪をタオルで拭き俺を見つめ話しかけてくる。 俺の隣を歩くのを横目でみ挨拶をかえし特に隠す必要のないので転校生のことを話す。 「今日は転校生がやってくる日だからな。一応どんなやつか確認しときたいだけだ。」 「ああ、管理委員長は大変だな。風紀や生徒会の手が回らない問題を解決しなきゃいけないなんて。」 「別に今日くる転校生が問題児だからというわけではないが…」 「そうなのか?以前転校生がくるときは特に行動しなかったじゃないか。」 「始業式の一週間たった今他の転校生や新入生が学園に慣れてきたころ1人だけで生活するのは苦痛だろう。外部の学校とは大分異なる独自の文化があるからなこの学園には。」 適当な言い訳を考えて伏見に話す。理事長に頼まれたと答えても良かったが深く考えると理事に転校生のことを頼まれたと大々的に俺が発言すると転校生に無駄な注目が集まる。 良くも悪くも理事も俺もこの学園では他の生徒たちよりは段違いに注目が集まる。 そんな俺たちが関わってると知ったら転校生にも迷惑がかかるだろうし、面倒な事になりやすい。 風紀が去年の事件の後片付けで忙しいから俺が監視するほうがまだ一般生徒も理解してくれるだろう。 俺がそう話すと伏見は一度顎の下に手を置きながら目を細め俺を覗き込んできた。俺よりも5cmほど身長が高いからかいつもよりも顔同士の距離が近い。部活終わりからなのか少し汗の匂いといつもの伏見本人の香りがする。 「雪白委員長様はその生徒と接触することで他の生徒たちがどんな反応するか本当に分かっているか?」 「…俺個人の感情で近づくわけじゃない。ただ今日くる生徒に問題がないか確認するだけだ。」 「いいや、わかってないね。他の生徒たちはお前個人の事情かただの仕事か関係なしに近づくものがいたらそいつは針のむしろになるだろうよ。」 思わず歪めた眉を伏見が指で押しにやりと笑った。 ここでこいつの親衛隊がいたら悲鳴が飛び交ってるだろうと思うくらいに俺はこの学園に毒されてる。 眉を押している指を手で払いながら無言で教室へ向かう。 後ろから押し殺した笑いが聞こえたが指摘するのが面倒だったため伏見をおいて教室への足をすすめた。
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