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理解が追い付かないまま、玄関のチャイムを鳴らしてみた。
「俺が出るよ、君は座ってて……」
そんな声が家の中から聞こえてきたかと思うと、もう一人の俺が出てきた。
「どちらさ……」
俺を見て、彼の表情は変わった。
「あなた……誰だったの?」
中から妻の声が聞こえる。
「あぁ、同僚だよ。
仕事の話だと思う……。
少し出てくるから、夕食を続けていてくれ」
仮に俺が彼だったとしても同じ反応をしていただろう。
そう言う意味では彼はどう見ても「俺そのもの」だった。
「お前は誰だ?俺の身なりを真似して、何のつもりだ?」
そんな風に聞かれても、こっちだって状況は分からない。
いや、俺には家族の記憶があるのだから演じているのはコイツに違いない。
そんな風に思った時には全力で相手の顔面を殴り、気絶させていた。
仮に自分と同じ思想なのだとしたら、先に殴られていたのがこっちだったとしても不思議ではない。
そんな風に考えると危ない所だったと思う。
窓から覗いて先に相手を認知していた分、こちらの方が判断が早かったのだろうか……。
気絶した彼を自宅裏の山に連れて行き、一番大きい木の幹に身体を縛り付けた。
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