家には既に私が居る

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 あれから少し経って、平穏な日々が返ってきた。  自分は既に死んでいて、ロボットになってしまっているという事は不思議だ。  なかなか信じられる事ではないが、家族にもまだバレてはいない様だ。  それに、ニュースでよく見る厚生労働大臣も私と同じ様に、もはや人間ではない……という事実も信じ難い。 「俺にはこんな可愛い奥さんと娘が居て幸せだなぁ。  ご飯も美味しいし、言う事なしだよ……」  妻が作ってくれたハンバーグもとても美味しい。  どうやら機械の身体でも味を感じる事はできるらしい。 「そう言えばお父さんが言ってた家族旅行の話なんだけど、ここが良いな……」  娘が見せてきた旅行雑誌のページは登別温泉……。 「良いねぇ、温泉」  食事中にチャイムが鳴る。 「俺が出るよ、君は座ってて……」  二人をダイニングに残し、玄関に向かう。 「どちらさ……」  彼を見て、俺の表情は変わった。 「あなた……誰だったの?」  中から妻の声が聞こえる。 「あぁ、同僚だよ。  仕事の話だと思う……。 少し出てくるから、夕食を続けていてくれ」
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