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ああ、目からしょっぱい汁が垂れて止まらない。
「俺は子供大好きなわけよ。生まれたら超猫っ可愛がりする自信があるわけよ。それこそ、昔は幼稚園の先生目指そうかと真剣に考えたほどなわけよ。そこで姉貴に子供が生まれて、それが天使のような可愛い女の子だったわけ。そりゃ愛でない理由ある?子供が少なくとも当分作れない俺からすると救世主みたいな存在なわけ」
「それは理解できなくはないけど」
「その救世主に嫌われたんだよ?それでショック受けないわけある?マジで心当たりないわけよ?」
ああ、気持ちがどんどんどんどん沈んでいく。八歳ということは、小学校二年生。昔見た時よりずっといろいろな知識を蓄えたレディになっていることだろう。もとより、四歳の時点で同い年の子供達よりずっと聡明でお喋りな女の子だったのだ。八歳の彼女は、それより遥かにいろいろなことを知っていて、大人びた少女になっている可能性が高いのである。
つまりただの感情論だけで、好き嫌いを言っていない可能性が高い。
四年前、よほど嫌なことがあって――俺個人を名指しして、会いたくないと言っているのだ。だが俺はそれを覚えていないので、謝りようがないのである。それはつまり、関係の修復が不可能ということではないのだろうか。
「大学時代に付き合っていた彼女にフラレた時も、同じようなこと言われたんだよね。……何が嫌だったのか教えて欲しいっつったら、それがわからないことが嫌なんだ!みたいな。でも、何でもかんでも察するのとか無理じゃん?はっきり言ってくれないと、謝るべきことも謝れないじゃん?……今回も同じパターンなのかなと思ったら余計に沈んじゃって」
「あー、まあそれは……」
姉は頭をぽりぽりと掻いた。
「気持ちは理解するわよ。つか、あんたの元カノの場合は、本当にあんたに非があったのか怪しいしね。“嫌なことをしたくせに自覚しない嫌な男”ってムーブして相手に罪悪感植え付けておきながら、実は自分に他に好きな人ができただけ!ってなことやるイヤな女もいるし。……つか前々から話聞いてた限り、あんたと彼女じゃまるっきり合わないなと思ってたから、その件は忘れた方がいいと思う。縁がなかっただけだって」
「そうかなあ……」
「それより、えみりよ、えみり。私も、あの子はあんたに滅茶苦茶懐いているように見えたから驚いてるの。マジで心当たりないのね?」
「ないんだこれが……」
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