1人が本棚に入れています
本棚に追加
はあ、と俺は深くため息をついた。四歳の頃に、何か嫌な思いをした。ということは、大人と違ってそこまで複雑な理由ではないはずだ。価値観だとかモラルとかではなく、もっとわかりやすく物質的な理由で嫌だった可能性が高い。
例えばそう、体臭が臭かったとか。おっさん臭い言動が嫌だったとか。
――でも、今だって俺二十五だし!四年前は二十一歳で、さすがにそれでオジさん臭くて嫌だったなんてことはないはず……!煙草もお酒もやらないし!!おやじギャグも覚えてる限り言ってない、はずだし!!
そもそも、自分を“叔父さん”と呼ぶのが躊躇われるからこそ、彼女は己をリオにいと呼んでくれていたのではなかろうか。もとより姉と比べて童顔だから、より叔父よりも兄っぽさがあったのかもしれない。
「……姉貴さ、それとなくえみりちゃんから理由聞けないかな?もしくは、電話でえみりちゃんと話すチャンスがほしいです……」
俺は考えた末に、どうにかそう絞りだしたのだった。
「えみりちゃんのことは大好きだけど、だからこそえみりちゃんが嫌な気持ちになるなら会うわけにはいかない。でも、その理由がわからないんじゃ、俺の駄目なところがあってもまったく改善のしようがないんだよ……。姉貴、説得して理由を聞き出してよ。お正月、えみりちゃんにごめんなさいって言いたいし」
「あんたも律儀ね。まだあんたの方が悪いと決まったわけでもないのに」
「俺はえみりちゃんを、そういうところで子供扱いしたくないし、見下したくもないから」
彼女のことは可愛い姪で、娘のようには思っているが。それはそれとして、子供だからといって侮るようなことはしたくないのだ。自分が子供だったらきっとそれはわかってしまうだろうし、嫌な気持ちになる。異性だから尚更。嫌なことは嫌、駄目なことは駄目というし、間違ったことをしたならきちんと大人としてごめんなさいと言わなければいけないのである。
彼女が大人になった時、自らの過ちを認める勇気をもった人になって欲しいから、尚更に。
「何度も言うけど、俺はえみりちゃんが大好きだし、久しぶりにお正月に一緒に遊びたいんだ。だから姉貴、頼むよ」
この通り!と俺が頭を下げると。姉はため息交じりに、しょうがないわね、と言った。
「まあ、私もあんたにえみりを見ていて貰えると助かること多いし。これからも世話になりたいし?……あんたに心当たりないんじゃどうしようもないもんね。じゃあ、私から尋ねてみるわよ」
最初のコメントを投稿しよう!