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次の日からコンカギのいない生活が始まった。相変わらず僕は宿題をしなくて、走れなくて、一人で遊んでて、変わったのはコンカギがいなくなったことだ。辛いとき悲しいとき、庭で静かにしているコンカギの背を撫でることもできない。ただ庭の犬小屋はそのままだ。幽霊でもいいからコンカギの姿を見たかった。そんな願いは叶えられることもなくて、ただ寂しい毎日を過ごしていた。
ただ、コンカギがいなくなって一月経った頃、おじいちゃんが子犬をもらってきた。その子を抱いたとき、つい僕は涙を流した。
「ねぇ、この子もコンカギにするの?」
「いや。コンカギじゃなくていい。いい名前をつけろよ」
子犬に頬ずりをする。
コンカギにもこんなときがあったんだ。僕の知らない赤ちゃんのコンカギがいたんだ。でも、この子はコンカギじゃない。コンカギじゃない名前をつけるんだ。
「ずっと側にいてよ。いい名前考えるから」
コンカギの思い出はずっと僕の中にある。お兄ちゃんよりお兄ちゃんだった大好きなコンカギは、僕の中ではたった一匹しかいないんだ。
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