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第2話.見知らぬ部屋
──キュイィィィン、という聞き覚えの無い音で、遥斗は目を覚ました。
遥斗と同じ理由でなのか、紬も目を覚ます。
……倒壊前と同じ体勢で。
「……お、お兄ちゃん……? さ、さすがに、気を失ってた妹を、その……お、襲う、ってのは、どうかと思うな……?」
いつもは遥斗に負けないくらいのブラコンの紬でも、少し薄暗い部屋で実の兄が自分の上に四つん這いでまたがっているという状況に、恥ずかしがりながらもそう伝え、目をそらす。
「へ……あっ、い、いやいや、これは違うんだって!!! ただ俺は紬を守ろうとしただけであって……!」
遥斗は勢いよく立ち上がり、弁明を試みる。──が。
「……」
「つ、紬いいぃぃぃ!!!」
遥斗、全力の弁明叶わず。
☆
そんなやり取りはしつつも、ブラコン・シスコンな兄妹ですぐに仲直りした。
床に座りなおし、やっと本題に入る。
「ここは一体……?」
先程も言ったが、謎の薄暗い部屋に倒壊前と同じ体勢で2人はいた。
そもそもこの時点で不可解な点がある。
遥斗の仕事が終わって家についたのはおそらく3時半。完全な遮光性を誇るカーテンは家にはないため、気絶してある程度時間は経っているとは言え、このレベルの暗さになることは通常ありえない。
そして、例の誤解事件を生んだ原因である体勢。家が崩れたのなら倒壊前と同じ姿勢でいるわけがない。更に、遥斗は紬に弁明する際、勢いよく立ち上がった。ならば、倒壊前に隠れたはずの机はどこに消えたのか。
「紬はこの部屋の存在知ってるのか?」
念のため、紬にそう問いかけるが、紬は首を横に振り、否定を示す。
(ふむ……)
この部屋を見渡すと、出口のような扉と他の部屋に繋がっていそうな扉が2枚、そして1番不可解なあれ。
淡い水色で光っている、例えるならばそう、アニメでよく見る魔法陣がある。
もうこれ以上座っていて得るものはないと思い、遥斗は「探索するか」と立ち上がると、ポケットに入れていたスマホが落ちる。
その拍子にスマホの電源が付き、日付と時間が表示される。
日付は今日だし、時間も午後4時。そして、この状況なら当たり前かもしれないが、圏外になっていた。
やはりまだ明るい時間、と思い、スマホを拾い立ち上がってこの部屋を見ると、窓がついてなかった。さらに、先程は暗くて気づかなかったが、よく見ると壁が石造りになっている。
(何なんだ、ここは……)
ますます謎が深まる中、紬は危険にならないようにと座らせたまま、遥斗は部屋の探索を始めたのだった。
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