1人が本棚に入れています
本棚に追加
第3話.探索
遥斗はまず、自身が目覚めたこの部屋の探索を始めた。
と言っても、座っていたときから、さらなる新しい発見は特になく、次は外に出れるのでは、と予め発見していた出口のような扉に向かう。
──と、扉に近づいたその時。
『警告します。この扉は入り口専用です。このダンジョン──アストラルの隠し部屋から出られる場合は、水色の魔法陣に向かって下さい』
脳に直接響くような女性の声が聞こえる。
「……ッッ!?」
遥斗はとっさの判断で扉から下がる。
「お兄ちゃん? どうしたの?」
その様子を見て、紬が遥斗に尋ねる。
「え……紬は聞こえなかったのか?」
「ん? 何が?」
「なんか……女性の声が」
「え? なんにも聞こえなかったよ?」
きょとん、と首を傾げる。その様子を見て、遥斗はますます警戒心を高める。
意を決して、もう一度同じ扉に近づく。と。
『警告します。この扉は入り口専門です。このダンジョン──アストラルの隠し部屋から出られる場合は、水色の魔法陣に向かって下さい』
まったく同じ声と言葉が聞こえた。
もう一度聞くことで、声ではなく言葉に注意して聞けたが、すごいことを言っていた。
──アストラルというダンジョン。そしてここはその隠し部屋、だと。
そして、やはり後ろのは魔法陣のようだ。
(ならば、これはアニメでよく見る異世界転生、というものなのか……?)
新しく聞き馴染みのない言葉がわかったところで、頭がさらに混乱するだけであった。
──するとその時。
『極度の困惑を確認しました。アストラル専用自立生命体、サラを召喚します』
「え!? な、なんの声!?」
遥斗は1度聞いた音声だったため、あまり驚かなかったが、今度は紬にも聞こえたようで、驚きのあまり立ち上がる。
危険ではないことはなんとなく分かるが、念のため遥斗は紬に近づく。
(イ・ティニだって……? なんなんだ、それは……)
そんなことを考えていると、目の前に小さな光が出てくる。もちろん、遥斗は立っているので空中に。
少しずつ光の大きさと強さが高まり、2人は目をつむる。
光が収まり、目を開けると、手のひらサイズの小さな妖精みたいなのがいた。
「遥斗様、紬様、はじめまして! アストラル専用イ・ティニのサラと申します!」
最初のコメントを投稿しよう!