炎雪記

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あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!! あたしの叫びが大気を震わす。世界のぜんぶが。あたしの目からとめどなく散り走る大粒の火の涙にこだまする。あたしはあたしはッ! ここであたしはッ。だからあたしはッ、あたしは、もう、ああ、わからない。なにも、もうなにひとつ。何かを考えることすらできないあたしは。でも、ああ、だからあたしはッ!! ああもう、あさぎ銀ッ!!ひなみ金ッ!!緑銀ッ!!赤緑ッッ。そして名前の無い色よ、太古の火の粉のひらめきよッ!!! あたしはすべてを、光に変えて。もうむちゃくちゃに、むちゃくちゃに。 火の粉を。火の粉を。すべての色を。白の雲間に、すべてをむやみに投げていく。 紅! 柚! 碧も、紺も藍も、すべて行け! 紫炎! 金光! 蘭玉! すべて行け! あああああああ!!!!すべて!!すべて! すべて空っぽになるまでゆけよ! 空を満たせよ!光れよ! もうすべて、死ぬまで光れよ!!! 命をかけて光らせよ!!  あたしの!!!あたしの!!!あたしッ、のッッ、 色の海。色の雲。はじける色が世界を満たす。空は火の粉でいっぱいだ。空は光でいっぱいだ。あらゆる色が。すべての色が。あたしの知るかぎりのすべての輝き。すべての色の名。すべて残らず、投げ上げよ。あたしが死のうと、あたしがこのままはじけて終わりゆくとても。 投げるぞ!投げろよ!光れよ。光れよ!!もう、どうとでも光れ!!! あいつを殺した、このくだらない大嫌いな世界の空隙のただ中で。あたしの光よ! もうなんでも、どうでも、すべてがどうでも輝けよッ!!! 色ッ、ほら、白銀ッ!!! もっとだ、白銀ッ!!! 光れよ、もっとだ、目くらむあかりで世界を包め!!  あたしがそこで投げ上げた、もう無茶苦茶なとりどりの色の洪水は。あいつが崩れてもうなにもなくなったからっぽの世界の雪原の上の空を。まだ降りやまぬ雪だけの空を。その日がすべて終わるまで。夜がくるまで。そして夜が来たとしても。それでもまだ、空の上で色の光をまたたかせている。サムライたちは、あっけにとられて。心を抜かれて、時もわすれて。ただ、見上げていた。百万の色の花が閃きはじける、万華の火の粉のもう降りやまぬ雪原の空を。いつまでも、いつまでも。見上げていた。見上げていた。
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