モト

3/19
前へ
/19ページ
次へ
 モトと私はしばらく見つめ合った。  しかし、もう一度目を閉じると、ごろんと身体を回し、今度は右下になって横になった。私の手がモトから落ちた。 「からかうなや、今更」  どきりとして息を呑んでいると、またモトの口から一定のリズムで息が漏れ始めた。肩幅の大きい背中が壁のようになって、モトの表情がみえない。  モトの背中にもう一度抱きつく勇気は、私にはなかった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加