11人が本棚に入れています
本棚に追加
モトと私が出会ったのは、ダラダラとした空気の流れるネットカフェだった。モトも私もネカフェに住みこんでいた。
私の前職は給料はよかったが、職場の人間関係がうまくいかずに辞めてしまった。体調を崩したため、今の職をみつけるまでかなりかかってしまったし、その間に貯金も底を尽きた。家賃を払っていると食べていけない。私はアパートを退去した。
実家は近い。ボロいアパートだ。
そこに住めないこともないが、私が高校生の頃から、シングルマザーの母親は、水商売をしてはどこぞの男をひっかけてきて、同棲した。結婚には至らない。
いきなり知らない男を連れ込まれて、一緒に暮らせと言われても。多感な頃の私がそう抗議しても、じゃあママは幸せになる権利はないんだ、と返される。
大人になって私はやっと家から出られたが、職場のいじめにより、心身を壊しそうになり、すぐ退職。籍は実家に戻ることになったが、家にはいられないため、ネカフェの個室から新しい仕事に通う毎日だ。
利用時間を極力安い時間帯にしたネカフェ代に、食費。メイク用品。動かせない出費は仕方ない。後は早く自分でアパートを借りるために、極力貯金。
ネカフェ生活は思っていたより出費がかかる。全く経済的な生活ではなかった。
モトはといえば、障害年金暮らしのようだ。ローンは組めず、アパートは借りれない。いつまでも実家暮らしではなく独立したかったようで、実家からの仕送りを元に、外に出てみたらしい。
モトは経済的にネカフェの個室はとれない。ブースでの生活は最初は周囲が気になり、病気に障った。しかし、住んでいると慣れてくるもので、今ではブースでもヘッドホンをしてネットをしている。
最初のコメントを投稿しよう!