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そんなモトと私が最初に話したのは、フリードリンクコーナーだった。
「そんなにおいしいですか?」
と、思わずきいてしまうほど、モトはココアを持って自販機とブースを行ったり来たりしていた。
声をかけられて驚いたモトは、自販機からカップが出てくる前に、開かない取り出し口を開けようとしたり、挙動不審になった。
「ね、寝れんのや」
「落ち着くために? そりゃこんな環境じゃ寝れないでしょう。ネットから離れないと」
「そやけど、ここはネットカフェや」
そう、このような光を浴びる前提の場所で寝ようとする時点で間違いなのかもしれない。それなら、と私はモトの袖を引っ張った。
「漫画読んでみたらいいじゃないですか」
「おれは漫画は読まへん」
「面白いですよ」
布教のチャンスだと思った。
モトに無理やり読ませた漫画は、私が昔から大ファンだった漫画家の名作シリーズで、アニメ化もされている。
その晩、モトは次へ次へと漫画の続編を読み、結局寝付けない夜となった。私も紹介した手前、違う漫画を読んで、一晩付き合った。
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