プロローグ

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『ポケナーゾ航空羽田行き、二十時二十分発、一○八便は、ただいま皆様を機内へとご案内中でございます。羽田行き、二十時二十分発、一○八便をご利用のお客様は保安検査場をお通りになり、七番搭乗口よりご搭乗ください』  機内後方の窓側。自分の席を見つけた女性は、荷物を収納棚に上げようとして躊躇した。その原因は、手前の座席にあるマリオネットだった。そのサイズは人ほどもあり、新聞紙を被せられた状態で放置されていた。  到着するまでマリオネットを膝に乗せた人の隣で過ごすのは遠慮したかった。女性はキャビンアテンダントを呼び掛けたが、諦めて荷物を棚に上げる事にした。目立つ行動はしたくなかったのだ。 「失礼。手伝いましょう」  女性が棚に上げようと抱えた荷物に、細く綺麗な男性の手が添えられた。 「ありがとうございま、きゃ」  小さな悲鳴を上げ女性が荷物から手を離した。お礼を言おうと視線を向けた先にいた主が、座席で新聞紙を被っていたマリオネットだったからだ。中腰で手を差し伸べていたマリオネットは、床に落ちた荷物を拾うとスラリと立ち上がった。そこで初めて女性は、マリオネットがほっそりとした人間の男性だと察した。 「ご、ごめんなさい。ありがとうございます」  動揺を隠すようにサングラスをかけ直した女性は、荷物を棚に乗せてくれた男性を横目で観察しながら窓側の自分の席に着いた。  男性はスーツが似合いそうな体格ではないが、オーダーメードだろうスーツの着こなしが紳士的だった。そして女性には、再び新聞紙を被り座席にもたれた男性の顔に見覚えがあった。
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