エピローグ

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エピローグ

 理紗の手術が終わり、彼女はICU(集中治療室)に運ばれた。執刀医が私に手術の結果を説明してくれる。 「娘さんは大腿動脈を損傷していましたが、その他に大きな怪我は有りませんでした。心臓の鼓動も再開し脳にも障害は残らないと思います。Oh型の稀血(まれけつ)も大学病院の在庫と貴女の輸血で喪失分は全て補う事が出来ました。もう大丈夫です」  私は溢れて来る涙を止める事が出来なかった。 「先生ありがとうございます!」  執刀医に大きく頭を下げた。  ICUで娘が目を覚ました。 「理紗、ママよ。わかる?」  まだ酸素マスクを口に付けた娘が小さく頷く。 「ママ……あのね。テイトが守ってくれたの。寒くて、痛くて、泣いてたらテイトが来てくれて温めてくれた。そしてママの声が聴こえて、私が書いた紙をテイトは運んでくれたの……」 「そうね。テイトにありがとうって言わなきゃね」  娘がもう一度小さく頷く。 「テイトに逢いたい……テイトを連れて来て」  私は泣きそうだった。テイトはきっと川に流されて……。 「……理紗、あのね……」
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