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その時だった。ICUのドアが開いて、真っ黒な物体が走り込んで来た。それはベッドの上に飛び乗ると酸素マスクをしている娘の顔を舐めた。
「ワン!」
その声は……? まさか?
「テイト……?」
その真っ黒な物体は、泥で汚れたテイトだった。
「わあー、テイト! ありがとう。私を守ってくれて!」
娘が嬉しそうにテイトを抱き締めた。私も嬉しくてまた涙が溢れて来る。でもテイトの所為で娘のベッドの上が真っ黒になっちゃった。
直ぐに同じく泥だらけの夫が走り込んで来た。
「浩二さん、テイトは無事だったの?」
「ああ、君達がヘリで出発して直ぐに泥だらけで戻って来たんだ。川岸に自分で泳ぎ着いたって見てた人が言ってた」
その言葉に私は本当に胸をなでおろしていた。
相変わらずテイトは娘をペロペロと舐めている。
「テイト! 温かいけど、くすぐったいよ!」
娘の笑い声に私達はやっと安堵の溜息を吐くことができた。
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