災害の発生

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災害の発生

 三月初旬、この地に来て約一年が経っていた。娘は来月から小学校に入学する予定で、幼稚園に行けなかった彼女はそれを心待ちにしていた。一方で私は小学校で娘が怪我してしまう事を相変わらず心配しながら過ごしていた。  ここ数日は季節外れの大雨が続いていて、やっと明日からは晴れの予報だった。悪天候にも関わらず毎日帰宅が遅い夫を心配する日々もやっと終わると安堵していた。 「ただいま! テイトは寝たんだね。理紗は?」  今日も午後十一時過ぎの帰宅となった夫がリビングのケージを覗きながら尋ねた。 「もうこんな時間よ。とっくに子供部屋で寝てるわ。ねぇ、お風呂は入るんでしょう?」  彼はネクタイを緩めながら大きく首を左右に振っている。 「すまない、今日は疲れたからもう寝るよ。明日の朝、シャワーを浴びるから」  そう言うと彼はジャケットを私に預けて二階の寝室に向かった。そして私が片付けを終えて寝室に入ると、もう彼はパジャマに着替えて自分のベッドで吐息を立てていた。  夫はこの地にある拠点の工場長(トップ)の立場だ。毎日遅くまで働いているし、仕事のプレッシャーもあるのだろう。 「……今日もお疲れ様……。浩二さん」  可愛い娘と息子(テイト)、そして優しくて頑張り屋の夫。私は幸せを噛み締めながら眠りについた。
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