災害の発生

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 突然、激しい音と振動に目を覚ました。気が付くと常夜灯も消えて部屋は真っ暗だった。手を伸ばし枕元の携帯を掴むとLEDライトを点灯してみた。  そこに映ったのは衝撃的な光景だった。隣の夫のベッドは見えない。その場所は岩や泥で一杯だった。寝室全体に光を当てると部屋の半分が無くなっている。多分、自宅は土砂崩れに巻き込まれたのだろう。茫然としながらも私はそう考えていた。  徐々に意識が鮮明になって来て私はハッとした。 「理紗!」  子供部屋も土砂崩れが襲った側だ。理紗は大丈夫なの?  急いでベッドから降りると足元も泥や小石で一杯だった。部屋のドアは辛うじて残っており、それを開けて廊下に出た。でもそこで私を待っていたのは絶望だけだった。娘が居た子供部屋部分を含めた家の半分は押し流されていて、廊下に転がる岩の向こうには空虚な外の空間が見えている。そこからヒンヤリとした外気が流れ込んで来ていた。  私は急いで残った階段を一階に降りた。一階も半分が無くなり、ダイニングの一部は残っていたけどリビングは無かった。そこのケージに居た筈のテイトと共に。  私は携帯の時刻を見た。時間は午前六時を廻った所だった。残った玄関から外に出ると東の空が薄っすらと白み始めていた。  外の光景は更に衝撃だった。自宅の半分は近所の数軒の住宅と一緒に土砂崩れに巻き込まれ二十メートル程下った所に押し流されていた。直ぐ下の天ヶ瀬川の直前で止まったのは幸いだった。もう少し流されていたら激流の川に落ちていた筈だから……。
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