理紗の救助とテイトの危機

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理紗の救助とテイトの危機

 その瞬間、先ほどの自衛隊の方が残骸から出て来た。その腕には娘が抱かれている。彼女の右足は血で真っ赤だ。  私は娘を抱えた自衛隊の方に駆け寄った。 「理紗! 良かった!」 「お母さん、まだです。理紗ちゃんは右足を挟まれて、動脈を損傷しています。出血量が多くて脈が非常に弱くなっています。」  彼の言葉に心臓が激しく打つのを感じる。 「このまま自衛隊のヘリで病院に運びます。理紗ちゃんは特殊な血液型とおっしゃいましたよね。お母さんと同じですか?」 「はい、私と同じです」 「それでは、お母さんもヘリで病院へ同行して下さい」  私は動揺しながらも小さく頷いた。 「それとワンちゃんですが、理紗ちゃんの所に案内してくれて、我々が理紗ちゃんの挟まれた岩を退かしている間、震えている理紗ちゃんに寄り添って、ずっとお顔を舐めていました。理紗ちゃんの命はワンちゃんが支えていたのだと思います」  大きく頷いた。やっぱりテイトが娘を守ってくれてたんだ。  しかしその後の彼の言葉に私は固まった。 「でも理紗ちゃんが挟まれた岩を退かした時に、周辺の土砂が再び崩れてワンちゃんが下の川に流されてしまいました。私の部下がワンちゃんを探していますが、あの激流ですから恐らく……」  両目に涙が溢れて来るのを感じていた。娘を守ってくれたテイトが激流に流されたなんて……。 「お母さん、でも今は理紗ちゃんを助けるのが先です。私と一緒にお願いします」  一瞬呆然としていたが、大きく首を左右に振ると夫を振り返った。 「私、理紗と一緒に行ってくる。テイトをお願い!」 「分かった。百合も理紗を頼んだぞ!」  私達はお互い頷き合っていた。
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