理紗の救助とテイトの危機

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 娘を抱えた自衛隊の方に続いてヘリが駐機している中学校の校庭を泥だらけのパジャマのまま走った。  娘はヘリのストレッチャーに寝かされて、私が乗り込みシートベルトを締めるとドアが閉められた。エンジン音が高まるとヘリは校庭を離陸した。前に座った自衛隊の方にヘッドセットを渡してくれる。ヘリの中は物凄い騒音でこれが無いと話せなかった。  娘の身体にはいくつかのセンサーが取り付けられ、ストレッチャーの横に心電図のモニターが見える。その心拍はとてもゆっくりで今にも止まりそうだ。 『何? 日田市内の病院では受け入れ難しいだと! 分かった久留米医大に向かってくれ』  ヘリの中の激しいやり取りが私のヘッドセットにも流れて来ている。その時、理紗の心電図モニターから甲高い警報音が鳴った。 『立花一尉、心停止です!』  心電図をモニターしていた若い下士官の男性が叫んだ。  私の心臓が鼓動を速めた。理紗が死んじゃう!  その時、立花一尉と呼ばれた男性がシートベルトを外すと、娘のストレッチャーの左横に立った。そして両手を娘の左胸に当てると心臓マッサージを始めた。 「川上一曹、氷パックを急いで準備して!」  川上と呼ばれた下士官は頷くと、ヘリの後方から何個かの氷の入ったビニール袋を持って来て娘の周りに置いている。  私は心臓マッサージをしてくれている立花一尉に聞いた。 「この氷は?」
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