理紗の救助とテイトの危機

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『身体を低体温状態にすると脳の血流停止時間を延長できるのです。残念ながら日田市内の病院は受け入れ体制が出来ていないので、四十キロ離れた久留米医大を目指しています。十五分で到着すると思いますが、出来るだけ脳のダメージを回避する為の措置です』  そう言いながら立花一尉は心臓マッサージを続けている。  私は娘を助ける為に様々な努力をしてくれている自衛隊の方に本当に感謝しながら、心臓マッサージをして貰っている娘の顔を撫でた。低体温状態にしている為、その(ひたい)はとても冷たい。でも心臓マッサージで血液が循環しているのだろう。彼女の頬はまだピンクだ。 「理紗、頑張るのよ」  私は娘の頭を撫でながらそう呟いていた。  結局、立花一尉はヘリが病院に到着するまで、脂汗を流しながら娘の心臓マッサージを続けてくれた。ヘリが着陸すると沢山の人が集まって来る。そして心臓マッサージは病院の医師に引き継がれ、ストレッチャーで娘が運ばれて行った。  私はヘリを降りると、立花一尉に大きく頭を下げた。 「立花さん、娘の命を繋いでくれて本当にありがとうございます!」 「いえ任務ですから。我々はこれから日田の現場に戻って他の方々の救助に当たります。理紗ちゃんとワンちゃんの無事を祈っています!」  その言葉にテイトの事を思い出して涙が溢れて来た。でも娘もまだ助かった訳ではない。今は彼女を助けるのが先だ。 「お母さんも、輸血用の血液を取ります。こちらへ」  病院の看護師が私に声を掛けた。私が立花一尉にもう一度大きく頭を下げると、彼は私に敬礼をしてヘリのドアを閉めた。そしてヘリは離陸して機首を東に向けて飛んで行った。  輸血用の血液を採取し、手術室横の待合室で娘の回復を祈った。 「理紗。テイトも他の沢山の人も、貴女を助ける為に頑張ったわ。絶対に元気になって……」
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