平和に潜む闇

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 あれから、彼女の姿は見ていない。学校は“誘拐”だと騒ぐが『流石に違う」とは口に出来なかった。彼女のバラバラに切り刻まれた写真が投稿されたのは二週間後(・・・・)のこと。  講義中、知り合いの情報屋である『キラーグラマー』からの連絡で発覚。包丁と鋸でギザギザの切り口。評価に繋がる生々しい流血や血溜まりが変にモノクロ加工され綺麗とは言えず。いつもなら『ゾワッとする』『鉄の臭いがしそうですね』なんて、無名でも書かれるのだが『最悪な殺し方をした』と批判の声ばかり。  名無し@444 『evilさん、手本見せてよ』  彼の元に見知らぬ無名のキラーからの挑発のようなコメントが届く。それが“殺した本人”なのか。観覧して『刺激が足りないから殺ってくれ』なのかは分からない。社交的ではない彼は『その人のセンスなんじゃない』と冷たく返すが『いいね!』は押さず。動くことのない涙で潤んだ光のない女性の目を見つめた。  講義後――。  心理学の分厚い教科書を乱暴に閉じる。  実は彼。人よりも感度が物凄く高く、人の思考や感情を読み取るのが癖であり、軽く見ただけで『どう思っている』のかすぐに分かるほど人の思考を読み取れる。そのせいか、心理学教授に気に入られ、講義では指名されることが多く目をかけられている。とはいえ社交的ではないため自分から話す機会は全くない。 「疲れた」  講堂を後にしようと立ち上がると「イーブル」と()の名で呼ばれ、殺気に満ちた目で睨み付ける。Yシャツにカジュアルジャケットのお兄さん肌の男性。同じ大学の三年生である彼の一つ上の先輩。しかし、彼はイーブルを裏へ堕とした本人であり『情報屋と監視役』でもあった。
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