巣作り下手なΩくん

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番になり、新居に引っ越してきてやっと生活も落ち着いた 先日まで段ボールで溢れ返っていたが、新しい家具に囲まれ落ち着いた雰囲気に仕上がっている 「じゃ、行ってくるな。 今日はちょっと残業があるから少し遅くなるけど、飯は食うから作ってくれると嬉しい」 軽く触れるだけのキスをし、頭を撫でてくれる大好きな人 「うん、いってらっしゃい!気をつけてね」 玄関で彼を見送り、今日も一日家の片付けやら役所への申請やらで奔走する 「はぁ...、やっとおわったぁ~」 ややこしい書類関係がやっと片付き、家に帰って来ると疲れからベッドにそのままダイブする 「はぁ...空の匂いがするぅ...」 彼の着ていたパジャマを抱きしめ、顔を押し当てる 大好きな匂いに包まれるとなんだかドキドキする そういえば、もうすぐ発情期の時期だなぁ... 番になってから初めての発情期 休みを取ってくれるって言っていたが、普段から不規則なこともありいつなるのかわからなかった為に断っていた 徐々に呼吸が荒くなり、身体が火照ってくる 「あれ?これ...ヤバいかな...」 今朝、彼が着ていたパジャマを抱きしめる もっと、欲しい... クローゼットから靴下を片方とワイシャツ1枚を取り出し、ベッドの上に置くも明らかに量が少ない パジャマを抱きしめて、顔を押し当てるように匂いをかぐ 「空ぁ...、初めて作ったけど、喜んでくれるかな...」 幸せそうに自分なりに作った巣の中で眠りに付き、大好きな彼が帰って来てくれるのを待つ 「ただいま~、あれ?りく、居ないのか?」 不安気な声が聞こえ、目が覚める 「空ぁ~」 寝室の扉が開き、フェロモンの香りに発情期が来たのに気付く ベッドの端に座り、僕の頬を優しく撫でてくれ、キスをくれる 「ただいま。ヒートきちゃったのか...一緒に居てやれなくてごめんな 今、楽にしてやるから」 しっかり抱きしめ合いながら深く口付けをする 濡れた音が室内に響き、腰が揺れる 「ふぁっ...もっと、もっと、して...」 四つん這いになり、尻を高く上げた状態で後ろから奥に挿ってくる まだ入れただけなのに、射精してしまいシーツに染みを作ってしまう 「んぁっ...あ"っ、はぁ...」 「前触ってないのに、挿れただけでいっちゃったか りくのナカもヌルヌルでアツくて気持ちいい」 後ろから耳元で囁かれるとゾワゾワする イッてすぐなのに、また緩く勃起しだし、先走りが垂れている 「まって、まだ...イッて...ひあっ」 グチュっ、ばちゅっと濡れた音を響かせて腰を打ち付けられる ナカを抉られるように擦られ、身体が跳ねる 「もっ、あンっ、もっとぉ...ハァッ、そらぁ、いっぱいにしてぇ...」 何度も奥を突かれ、その度に精液が飛び散る イッてるはずなのに、強い快感が次から次と押し寄せ、目の前がチカチカする 「オレはまだイッてないから、まだ付き合ってくれよ」 少しだけ抜かれ、向きを変え抱き合う形になり、舌を絡ませながらキスをする さっきよりも深く入り、気持ちところを全部擦られて何度も射精してナカを締め付ける 奥深くで熱いものが出ているのを感じ、グッタリと力が抜ける 「はぁっ...はぁっ...おなか、あったかい..」 何度も口付けをし、気持ちよさに抱き合ったまま眠りに落ちる 外が明るい 窓から入る日差しの眩しさに目が覚め、隣で眠る彼に擦り寄る しかし、違和感を感じ周りを見渡すも作ったはずの巣がない 昨日の行為で壊れてしまったのかと、作り直そうと服を探すが何も見つからず 「あれ?」 「おはよう、りく。どうかしたのか?」 後ろから抱きしめられ、彼の匂いに包まれると不安だった気持ちが少し和らぐ 「ううん、何でもない。空、今日も仕事でしょ?時間、大丈夫?」 「昨日のうちに、ヒートの休暇申請したから大丈夫だよ。 今週いっぱい側に居れるから」 不意に一緒に居てくれる時間が出来、嬉しくて飛び付くように抱き付く 巣はまた作り直そう 次は褒めて欲しいなぁ... そんな事を思いながら、午前中は二人一緒にベッドの中で過ごした 午後からは急な休暇申請だったせいで、引き継ぎが出来ておらず、自室にこもって連絡をしている空にコーヒーと軽い軽食を持って行く 今がチャンスだと思い、また靴下とTシャツ1枚をベッドに並べ、本人的にはちゃんと巣が出来たと満足気にその上に寝転がる 「空、褒めくれるかなぁ...」 引き継ぎが終わったのか、寝室に入ってきた彼が目を丸くし、こちらを見て来る 「オレが居なかったから寂しかったのか?そんな服より、オレに抱き付いたらいいよ」 巣を褒めて貰えると思っていたのに、気付いてすら貰えず、持ってきた服をベッドの下に落とされる 胸がギュッとなる痛みに涙が溢れ出し 「りく?どうした?どっか痛いのか?」 急に泣き出した僕を慌てて慰めてくれる 優しく涙を拭い、キスを顔中にしてくれる 大好きだし、幸せなのに... 巣を壊された悲しみで涙が止まらなかった いつの間にか泣き疲れて眠ってしまい、今回はもう巣を作るのは辞めた また壊されるのが怖くて、でもいっぱい愛してくれるのは嬉しくて、気持ちを打ち明けれずに終わった それから発情期の度に1度は巣作りに挑戦してみるも、いつも同じことの繰り返し 作っても気付いて貰えず、すぐに壊される 悲しくて、ツラくて、涙が止まらない そんな僕を優しく宥めてくれ、いっぱい愛してくれる 次からは もう作るのはやめよう そう決心すると少し心が軽くなった 巣を作らなくても、彼は僕の事をいっぱい愛してくれるから... 「先輩これ知ってます?」 後輩に笑いながら見せられたハトと木の枝が数本転がってる横に、卵が置かれた画像を見せられる 「何だこれ?」 「ハト、めっちゃ巣作り下手らしいんですよ。産めればいっか?って感じのが面白くって、たまにコレ巣か?ってのがSNSで回って来るんですよ」 本当に巣とは形容し難い適当な出来に笑いが出る 「そういえば、Ωって番の服とかで巣を作るってホントっすか? 先輩の番さんも巣作りしたりします?」 「いや、巣作りはしてないと思う。今んところ見たこと...ん? ハトのコレも巣何だよな?」 後輩からの言葉に何かが引っ掛かる 発情期になると一緒にいるはずなのに、服を少しだけベッドに持ち込むことや、退けると何故か悲しそうにする愛しい人の顔が頭を過ぎり、ハトの巣と何故か既視感を覚える 「ハトかよっ!?」 急に大声を出してしまった為に周りが驚いたように振り向き、どうした?とちょっとした騒ぎになる 「わりぃ、大声出して... アレ、巣作りだったのか...ってのがあって、な... 毎回壊してたことになるのか...?」 今までベッドに置かれていた衣類が実は巣作りだったのだと今更ながらに気付き、頭を抱える 後輩に事情を説明すると、巣の状況を笑われるもかなり心配された 「Ωにとっての愛情表現らしいっすから、早めに誤解解いた方がいいっすよ 鬱になったりする子もいるって聞いたことあるんで」 最近、ペース早いなぁ... 周期的にくるヒートのせいで身体が熱く、ベッドから出れずにいる シーツだけでは物足りず、また巣を作りたい衝動に駆られるも、壊されることへの恐怖から動くことができない 「早く、帰ってきて...いっぱい、愛して欲しい」 シーツに包まって少しでも強く彼の香りに包まれようと彼の枕を抱きしめる 寝室の扉が開き、彼が帰ってきたのがわかる 「おかえりなさい。今日、早いんだね」 シーツから顔を出し、嬉しそうに笑いながら両手を広げて抱っこを強請る いつもならすぐに抱きしめてくれるはずなのに、今日はなにかを探すようにキョロキョロと辺りを見渡してなかなか抱きしめてくれない 「今回は巣作りしてくれないんだな...」 思ってもみなかった言葉にドキリとする 気付いてたの?知ってて、壊してたの? 嫌なことばかりが頭を巡り、伸ばしていた腕がダラリと落ちる 「僕が作った巣は、要らないってことじゃなかったの? 褒めて欲しかったのに、いつも壊されて...哀しくて、痛くて...」 流れ落ちる涙を指で拭われ、優しく抱き締めてくれる 「ごめん、全然気付かなくて...今日、ハトの巣作りって画像を後輩に見せられて気付いたんだ りくはちゃんとオレの服で巣作りしてくれてたんだって...」 「ハト?画像?なんで、ハトと僕が一緒なの?」 訳のわからないことを言われ、不満気な顔をする 見せられたハトの下手くそな巣の画像を見て、なぜか親近感が湧く... 「あれ...ハト、コレが巣ってことだよね... 僕の作った巣も...」 今まで作った巣とハトが作った巣への共通点にガックリと肩を落とし 「空、ごめんね。僕が巣作り下手なのが原因だったんだね... これじゃ、気付いて貰えなくても仕方ないよね...」 目元の涙を拭うようにキスをされ 「いや、次からはわかるから、りくの好きなように作ってくれ わからなかったら聞くし、りくも嫌なことは言って欲しい これからずっと一緒にいるんだから、誤解で喧嘩とか別れたりしたくないから」 彼にしっかり抱きついて頷き、そのまま二人でドロドロになるほど愛し合った 後日、彼に頼まれて作った巣は前よりは少しだけ衣服が増えたものの、並べただけのようなもので 「これ、空の匂いがいっぱいで好きなんだ こうやって広げて、その上で寝転ぶと一緒に居てくれてるみたいで幸せなんだよ」 よく見ると、仕事や私服でよく着ているモノが中心に集められていることがわかる 幸せそうに笑いながら説明してくれるりくに、愛しさが溢れる 二人でそのまま巣に寝転がり、穏やかな日を過ごした これからも、下手な巣が作られるだろうが、愛が溢れている巣を壊すことはないだろう
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