4人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日の夕方、散歩も後半の帰り道。
「カータークーーリーーー💦💦」
「ぎゃう~(嫌や~)」
「お願いやし、動いてー!家、帰ろうさーーー!」
「ぎゃうぎゃう~~(テコでも動かへんで~)」
お母さんは、軽くカタクリに繋がるリードを軽く、くいっくいっと引っ張る。これに対してカタクリは、頑なに伏せの姿勢を崩さず立ち往生…かれこれ三十分程この状態が続いていた。
「なぁ、カタクリ…何が嫌なん?教えて~な~?」
「わん、わん、わぅーん💦💦(なんか分からへんけど、嫌なんやー💦💦)」
言葉は通じなくとも、何となく意味を汲み取ったお母さんから漏れ出すは、大きな大きなため息。
「はぁー…」
大きな大きなため息を聞いて、お母さんをちら見するカタクリ。
「わふんっ、ぶふんっ、ぶぅふん!(そんな大きな大きなため息ついたって、僕は動かへんで~)」
カタクリの抗議を聞いて、「あー………」と、夕焼けできれいな空を見上げるお母さん…立ち尽くす。
それから何分経ったのか、カタクリの耳がピーーーンと立つと、遠くから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「お母さーーーん!カータークーーリーーーーー!」
カタクリがすくっと立ち上がり、ブンブンブンブン、大空へ飛び出しそうな勢いでシッポを振り回す。
「ワッ、オーーーーーーーン💓(マキちゃ~~~~~ん💓)」
「カッ、カッ、カッ、カタクリーーーっ💦💦💦」
急に全力で走り出すカタクリに、大慌てで駆け出すお母さん!
「ハッハッハッ…ワオーーーン!(マキちゃーーーん!)」
声が聞こえる方へひたすら走るカタクリに、ぜーはーぜーはー息荒く走って着いていくお母さん。
「カタクリ~!」
あと少し!両手を大きく広げて、屈んで待っているマキちゃん。
五メートル、四・三・二・一…ジャーーーーーンプ!!
「ワッオーーーン!(マキちゃーーーん!)」
マキちゃんに飛びついて、ほっぺたをベロンベロンなめるカタクリ。
「キャーッ!カタクリー!」
楽しそうにジャレている娘とカタクリを横目に、息荒く倒れそうになっているお母さんが呟く。
「…カタクリめ…ぜーはー…せーはー…」
最初のコメントを投稿しよう!